不完全美学

あたしは凪のそばに寄った


「今の誰?」

「美術部の顧問」


凪はそう答えるとそそくさと絵の準備を始める。

そう言えば顧問を見たのは初めてだ。

滅多に関与してこないユーレイ顧問が何の用だろう。

あんな深刻そうな雰囲気で。


あたしは少し疑問に思ったけれど、きっとあたしには分からない部活に関する話だろうと思って考えるのをやめた。

ふと、変化に気付く。


「……梓ちゃんは?」


凪は準備を進める手を止めずにあっさりと答える。


「辞めた」
< 227 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop