不完全美学
梓が美術部を辞めた?
凪はキャンバスを前にして椅子に座り、デッサンを始める。
梓の話題には関心がないみたい。
あたしは理由を聞かなかった。
聞かなくても分かったから。
梓には悪いけど、あたしには少しの同情の他に安堵が起こった。
凪は梓を選ばなかったんだ。
まだあたし、ここに居られる。
凪の真剣な横顔を盗み見るあたし。切れ長の瞳があたしを釘付けにする。
こんな、近くに居るのに。
触れられるほどの距離に居ながら、触れられない関係。
これはこれで結構キツイや。