不完全美学

あたしは数学の授業の後、職員室に向かう藍田さんを呼び止めた。

もちろん、数学の質問をする訳ではなくて。


「藍田先生!」

「はい?」


振り返った藍田さんを見上げて、にっこりと微笑む。


「先生、あたしと遊ぼうよ」


すると藍田さんは軽くあしらうよに、浅く笑って見せた。


「教生って意外と忙しいんだよ。また今度な」


そう言って職員室に入ってしまった。
それでもあたしは引き下がらない。

放課後、藍田さんが帰るのを待伏せた。


先生達に挨拶をしながら駐車場に向かう藍田さんを見付け、あたしはさっと鏡でチェックしてから駆け寄った。
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