不完全美学
「地元の経済学部とかでいいやとか、思ってた」
凪がそんな風に思うなんて意外だった。
凪はいつも曲がらない信念を持ってるように感じていたから。
「なんで、そう思ったの?」
凪は遠くを見るような表情で、少しだけ目を細める。
トン、と絵の具のついた筆でキャンバスを叩いた。
「描けなかったから。無理だと思った」
そうだった。
出会った頃の凪は、描けないことで苦しんでいた。
描きたいものが分からないって言って、凪は闇を描いていた。