不完全美学
今の凪は相変わらずの無愛想だけど、少しだけ穏やかに見える。
凪は変わったんだ。
「それでも美大を受けることに決めたのはなぜ?」
あたしの質問に凪はまた視線をこちらに移した。
今度は逸らさない。
「お前と会ったから」
あたしはしばらくその答えの意味を上手く理解できないでいた。
相変わらず凪との会話は難しい。
「あたしが何かした?」
凪とあたしの二人きりの空間。
流れる空気は柔らかかった。
「お前は怒った。そして泣いた」