不完全美学
「藍田さん!」
「また君か。どうした?」
あたしはこれ以上ないくらいに人懐っこい笑顔を向ける。
「もう教生の時間は終わったよ、藍田さん」
そう言って藍田さんの腕を柔らかく掴む。
真っ直ぐに藍田さんを見つめると、パチッと視線がぶつかった。
あ、この人、目も綺麗。
「……仕方ないな」
藍田さんはあたしを車に乗せ、ゆっくりと走り出した。
翌日あたしはチャラい彼氏にメールで別れを告げた。
そして真弓だけには、藍田さんとのことを打ち明ける。
あたしは始終ニヤニヤしていたに違いない。