不完全美学
心臓ってこんなに強く打つものだったんだ。
きつく絞まって、息が上手くできない。
怖い。
だけどきっとこのままじゃダメなんだ。
あたしは一歩踏み出さなきゃいけない。
「あのね、凪……」
凪を見ると、すごく、すごく優しい目であたしを見てくれていた。
その目にあたしは負けそうになるけど、息を整えて続ける。
逃げちゃいけない。
あたしは強い女だったでしょう?
「あたし、凪と一緒に居られなくなるのは嫌なんだ」
冷たい風があたしと凪の間を抜ける。