不完全美学
また?
だから“わかった”ってなんなのよ。
あたしを置いて先を歩く凪を追いかける。
「待ってよ、凪!」
するとスタスタと歩く凪が、わずかに手を差し出したのに気がついた。
まったく、凪はわかりにくいんだから。
あたしは自然と頬が緩み、なぜだろう、泣けてきちゃった。
ゆっくりと手をのべて、その手を取る。
始めて握る凪の手は、大きくて優しかった。
凪の考えてることは、いつもよく分からない。
だけど今だけは、凪の気持ちが分かる気がした。
握ったその手が教えてくれた。
END