不完全美学
ハッとしてあたしは携帯で時間を確認し、美術室を飛び出した。
藍田さんが帰る時間。
駐車場に居た藍田さんは、あたしに気付くと笑顔で手を振った。
どうしてだろう。
笑顔が嘘臭く見えてしまう。
あたしはそれには応えず、腕を掴むと真っ直ぐ目を見て問い掛けた。
「藍田さん、もう加藤さんとキスはしたの?」
藍田さんの表情が、明らかに変わる。
なんだか支離滅裂な言い訳を始め、ついには軽くキレ出した。
あぁ、そっか。
そうなんだ。
「もういい、バイバイ」
あたしは藍田さんの腕を離し、目も合わさずにその場を去る。
その後でA組の友達に電話して聞いたら、どうやら凪の話は本当だったみたい。
あたしとしたことが情けない。
あたしはトボトボと美術室に戻った。