不完全美学

美術室の前ですこし躊躇う。

凪はまだ居るのかな。
居るよね。
あぁ、あたし格好悪い。

あたしはゆっくり扉を開ける。

凪はまたチラリとあたしに視線を向け、少し驚いたみたいな顔をした。


「お前、何情けない顔してんの」

「うるさい……」


あたしは苛立ちと情けなさに顔を歪めていた。

悔しい。

あたしは欲しいと思った男は手に入れないと気がすまない。

みんなが欲しがる男を手に入れて優越感を得る。

だけど魚を釣り上げたはずのあたしの方が、本当は餌にかかった魚だったんだ。

しかも他の魚と同様に。
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