不完全美学

あたしは凪のそばに寄り、そのキャンバスに目をやった。

相変わらず、気が滅入りそうな黒い絵。


「悔しい……男は女に利用されてれば良いんだ。男なんて、下らない奴しか居ないのに」


椅子に腰掛けている凪はあたしを見上げた。

こんなこと凪に言いたかったんじゃない。

だけど込み上げる泥みたいな感情は、吐き出さずにはいられなくて。


「凪もそうだよ。なんで凪もあたしと付き合わなかったの? あたしの何がダメなわけ?」


咄嗟に腕を掴まれた。
凪が怖い顔であたしを見てる。


「なんでそんな必死になってんだよ。男が居なきゃ死ぬのかよ」
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