不完全美学
あたしは衝動的に、足元に置いてあったペンキの缶からハケを抜き出す。
軽い唸りと共に、あたしはハケを振り投げた。
一瞬、しまった、そう思った。
ハケから飛び散った白いペンキが、凪の黒い絵に付着したから。
真っ黒だった凪の絵に、沢山の白い点々が付く。
ハケが音を立てて床に転がったけど、あたしも凪も黙ってキャンバスを見つめていた。
どうしよう、怒られる。
でも謝る気にはなかなかなれなくて。
シンとした空気が痛い。