不完全美学
何を思いながら凪がひたすらに“闇”を描いていたのかは知らないけど、あんなに時間をかけた作品。
それをダメにされて、平気なはずない。
罪悪感と焦りが渦巻くあたしをよそに、凪はしれっとしてキャンバスに触れた。
ふぅん、と小さく呟いたかと思うと、あたしに視線を移す。
「星があるのも、悪くないな」
「星?」
あたしはそのキャンバスに目をやった。
闇だというその黒い絵に小さな白い粒が沢山ついて、まるで星空みたいに見える。
なんだか堪らなくて、あたしは泣きたくなった。