不完全美学
下らない女
玄関を開けたあたしは「ただいま」を飲み込んだ。
少し汚れた男物の靴。
部屋の奥からは、ママの声。
「ふふ、やだぁ……あ…」
そして声は荒さを増し、吐息が混じり出す。
あぁ、またか。
あたしは一度開けた玄関をもう一度閉め、マンションを出た。
時間潰しにどこか行こう。
お腹減った。
お金はあんまりないから、マックかな。
あたしは誰か男にご飯奢らせようかとも思ったけど、ケータイを開いた時点でやめた。
男に甘えて、おねだりしたりするのは面倒だった。