不完全美学
そろそろ帰ってもいい時間だろうか。
あたしはすっかり暗くなった道をフラフラと歩く。
ママが付き合う男は、どれも貧乏でいい加減な男で。
たいていの場合しばらくすると他に女を作っちゃう。
どうして繰り返すんだろう、ママは。
薄く浮かび上がった月が、あたしのことを見下ろしている。
そしてその黒い空には、小さい星が無数に散らばっていた。
ふと、凪のあの絵を思い出す。
『星があるのも、悪くないな』
なんか変だな。
本物の夜空を見てるのに、あの時みたいに泣きたくなんてならないや。