不完全美学
その時なんでそんなこと言っちゃったのか分からない。
心の中で思っていたことには違いないけれど、いつだって飲み込むことが出来ていた。
その時のあたしは、少し変だったんだ。
「あの人他に若い女とも付き合ってるよね。ママがあげたお金はその女へのプレゼントに変わるんだよ。カモられるだけカモられて、また捨てられるよきっと」
息もつかずに一気に吐き出した。
瞬間、コップを持っていたあたしの右手がパシンとはたかれた。
零れて飛び散る麦茶。
割れて砕け散るコップ。
あたしはしばらくそれらを見つめていた。