不完全美学
恐る恐る顔をあげると、そこには苛立ちと悲しみを混ぜたみたいな顔をしたママが居た。
「ほっといてよ……私のことは。あんたは好きにしたらいい。だから口出ししないで」
ママはまたゆっくりとソファーに戻った。
肩が少し震えているように見える。
あたしもまた微かに震える指で、割れたコップの後始末をした。
見て見ぬふりをお互いに決め込んでいた親子だった。
ママのすることに不快さを感じたって、何も言わなかった。
触れてしまった。
やっぱり、触れると少し痛いや。