不完全美学

その日の放課後、美術室に行くはずだったあたしは暇を持て余していた。


「ねぇ真弓〜、遊ぼうよ〜」

「無理だよ。今日は淳司とデートだもん」


あたしはわざとらしくふて腐れて見せる。

真弓はお構いなしに帰る準備を進めていた。


真弓と淳司君はもうすぐ付き合って一年になる。

浮気も心移りもしない真弓に、あたしは一度聞いたことがある。

『飽きないの?』って。

すると真弓は少し笑って、しっかりと答えた。

『飽きない。毎日新しい淳司を見つけるから』


あたしにその意味は理解できなかった。

そしてそれは今も変わらない。
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