不完全美学
【二人の影】
自分の事をあまり話さない凪がこんなに喋るなんて、正直驚いた。
ただ、『描けない』と言った凪の顔、あたしは一生忘れられないと思う。
いつも無愛想な凪が沈み込んで行くのは、見ていて気分の良いものじゃなかった。
あたしと凪は変な関係だったね。
あたしは凪と付き合いたい訳じゃなかったし、たまにムカつくし。でも何かと構ってた。
凪は凪であたしのこと欝陶しそうに見るくせに、突き放しはしなかった。
友達と呼ぶにはお互いを知らな過ぎる。
だけど敵じゃない。
あたし達はそんな感じだった。