不完全美学
「分からなくなったんだよ、何のために絵を描いてるのか。そしたら描けなくなった」
少し投げやりな凪の言葉。
あたしは少し胸が痛くなったけど、苛立つ気持ちもあった。
「描くのが好きだから描いてたんでしょ? 難しく考えなくて良いじゃない」
「分かったような事言うなよ」
凪の声が低く響いて、あたしの言葉を遮った。
「周りに期待されて、でも絶対越えられない存在が身近に居てさ……」
絶対越えられない存在って、画家のお父さんのことかな。