不完全美学

ガヤガヤとざわめく朝の校舎。

眠そうな沢山の顔の間を通り抜ける、栗色の髪の男。

あたしはその一瞬にして、決意を固めた。


「……あの人にする」

「へ?」

「あれにする! ね、あれ誰!?」


あたしは真弓を廊下まで引っ張り出し、栗色の髪を指さした。

真弓はあたしの指指す方に視線を移して、その姿を確認する。


「あれはA組の北澤君だよ。美術部の王子様」


王子様、欲しい。
そんな素敵なフレーズ、みすみす聞き逃しちゃうはずない。
< 7 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop