不完全美学
ガヤガヤとざわめく朝の校舎。
眠そうな沢山の顔の間を通り抜ける、栗色の髪の男。
あたしはその一瞬にして、決意を固めた。
「……あの人にする」
「へ?」
「あれにする! ね、あれ誰!?」
あたしは真弓を廊下まで引っ張り出し、栗色の髪を指さした。
真弓はあたしの指指す方に視線を移して、その姿を確認する。
「あれはA組の北澤君だよ。美術部の王子様」
王子様、欲しい。
そんな素敵なフレーズ、みすみす聞き逃しちゃうはずない。