不完全美学

あたしは手元にあった凪の絵を一枚拾い上げる。

朱色のグラデーションに、ランダムに描かれた紺色の大小の円。

やっぱり何の絵かは分からなかったけど、あたしは夕暮れの絵だと思った。


「ちなみに、あたしは凪の絵好きだよ」


凪が驚いたみたいにあたしを見る。

あたしは何だか照れ臭くなってしまって、意味もなく画集を開いてみたりした。


「お前、趣味悪いんじゃねえの?」


見ると、いつもの無愛想な凪が居た。

あたしは少し笑って答える。


「そうかもね」
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