不完全美学
凪はクッと伸びをしたかと思うと、おもむろに立ち上がった。
座ったままのあたしを見下ろした凪が言う。
「お前、名前何だっけ?」
「え? 葉月だけど」
「葉月ね」
驚いた。
まるで他人になんか興味ありませんって態度だった凪が、あたしの名前を覚えようとしてる。
ちょっとは心を開いたってわけ?
ほんと、わかりにくい奴。
再び整理を始めた凪。
あたしはそのそばで簡単な作業を手伝った。
放置されていた準備室が綺麗に片付いた頃には、もう日が暮れていた。