不完全美学

凪はクッと伸びをしたかと思うと、おもむろに立ち上がった。

座ったままのあたしを見下ろした凪が言う。


「お前、名前何だっけ?」

「え? 葉月だけど」

「葉月ね」


驚いた。

まるで他人になんか興味ありませんって態度だった凪が、あたしの名前を覚えようとしてる。

ちょっとは心を開いたってわけ?

ほんと、わかりにくい奴。


再び整理を始めた凪。
あたしはそのそばで簡単な作業を手伝った。

放置されていた準備室が綺麗に片付いた頃には、もう日が暮れていた。
< 72 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop