不完全美学
凪が描きはじめて一時間ほど経った時、ふう、と凪が息を吐いた。
画用紙には本物よりも数段落ち着いた雰囲気の、花瓶やグラスが描かれている。
前に見た凪の絵とはまったく違う、写真みたいな絵。
こういうのも描けるんだ。
「出来上がったの?」
「いや、これから影を入れて質感を出す」
息抜きのデッサンなのかと思ってたけど、凪は手を抜かないみたいだ。
するとおもむろに身体を捻り、後ろにある棚に手を伸ばす凪。
そこから取り出した画用紙をあたしに差し出した。
「なに?」
「退屈だろ。何か描けば?」