不完全美学
一時間も放っておきながら今更?
そう思ったけれどあたしは素直に受け取った。
「何描こう?」
「そんなことまで知ったこっちゃねえよ」
そう言いながら凪はあたしに鉛筆を渡す。
少し膨れていると、凪はプイとまた画用紙に視線を戻した。
あたし絵心ないんだよね。
真剣に鉛筆を走らす凪を横目に、あたしはゆったりと鉛筆を遊ばせた。
絵を描くなんて久しぶり。
下手くそだけど、なんだか楽しくなってきた。
鼻歌なんか唄って。
その横で凪は全く気にもかけずに描き続ける。