不完全美学
「凪はやっぱり上手いね」
凪はそれには答えないで、おもむろにあたしの絵を取り上げる。
「ちょっと、あたしのは下手だから見ないでよ」
取り返そうとするあたしの手を、ひらりとかわす凪。
そしてまた、ふうん、と呟くとあたしに視線を移した。
「なかなか良いな。俺には描けない絵だ」
それって下手すぎて俺には真似できねぇよ、って意味?
凪が素直に人を褒めるとは思えないしね。
「嫌味?」
「いや、本心」
どうやら凪は本当に褒めてくれたらしい。