不完全美学

あたしは凪の手元にある自分の絵を覗き込む。

やっぱり、お世辞にも上手いなんて言えない。


「すっごい下手じゃん。どこが良いの?」


凪はただじっとあたしの絵を見つめている。

その視線はなんだか優しくて、ドキドキする。

見つめられているのはあたしの絵であって、あたし自身じゃないのに。


「何て言うか、愛情がある」

「愛情?」

「これ、お前の家族?」


そう聞かれてハッとした。

あたしの絵にある下手な男女は夫婦に見えなくもない。

そして傍らの小さい女の子は夫婦の子供。

そんなつもりで描いたんじゃないんだけど。
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