不完全美学

バッチリとぶつかる視線。

マズイと思って、あたしは部屋に隠れた。


「おう、無視することねえだろ」


あたしの肩がみっともなくビクッと震える。
ミシミシと軋む廊下。


いや、来ないで。


そんな願いも虚しく、部屋の扉が開かれた。

あたしは慌てて服を着る。


「葉月とか言ったな。葉子の娘だけあっていいオンナだ」


ニタニタと笑う男に、あたしは吐き気さえ覚えた。


「出て行って下さい。母は居ません」

「まあ、そう言うなよ」


聞く耳を持たない男。
イライラする。
< 89 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop