不完全美学
男はママの傍らを摺り抜けて部屋を出て行った。
「待ってよ……!」
ママは引き止めようとしたけれど、男は何も聞こえないみたいに出て行く。
玄関が荒々しく閉じられる。
あたしを振り向いたママは、涙を浮かべた瞳であたしを睨んでいた。
「あたし悪くない……。アイツがあたしにっ……」
言い終わらない内に、あたしの頬に痛みが走った。
熱を持った頬が痺れる。
「なんで、あたしをぶつの」
ママは悲しみと怒りを同時に含んだ目をあたしにぶつける。
「どうして私の邪魔をするの!?」