不完全美学
扉を開けると、画材の片付けをしている凪と目が合った。
「……お前、また情けない面してるのか」
あたしはその場にへたり込む。
身体が重くて、視界がゆっくり滲む。
枯れそうな声であたしは言った。
「たすけて、凪……」
凪は持っていた筆を静かに机に置き、あたしの正面にしゃがむ。
「どうした」
凪の声はいつもみたいに無愛想なものじゃなくて、心地良く響く優しさを持っていた。
あたしは余計に堪らなくなり、泣きたいのをこらえながらさっきあったことを話す。
凪は相槌も打たずにただ聞いていた。