神々の聖戦
ーカチカチ
体から時計の音がするのは妙なものだ。
ユンの部屋のソファーに座って自分の胸に手を当てる。
「どうしたの?」
『ううん…ユンは聞こえないよね。』
「…なんの話?」
この時計の音はどうやら存在を知り、見た者しか聞こえないらしい。
「そういえば今日の授業で召喚術学んだんだよね。ユンは誰かと契約したの?」
『…まぁ』
「え!誰と誰と!?」
女の子顔負けのきらきらとした目で迫られる。
私とユンは性別を間違えたらしい…
『シャルルとヘブン』
「あぁー…時の女神に忠誠を捧げた双子の天使だよね。シャルルのほうは黒い翼の天使だって聞いたよ。」
『…いつも翼を出してるわけじゃないけどね。』
「なんで今日契約したばっかりなのにわかるの?」
ユンは昔から鋭い
しかも私はそのことを予知できない。
なんとも厄介な幼馴染を持ってしまったものだ。
彼が契約したのは
“無の神”
それは脆く思えてしまうかもしれない。
しかし、全ての無効化を可能にし、あらゆる神からの侵害を受けない無の神は器次第でかなりの武器となる。
更にユンの場合は際立った神の能力を使えなくても魔法が使えるため戦闘力も馬鹿にならない。
もちろん私の予知も彼には効かないし、時を止める魔法ですら効かない。
だから…とても面白いんだ。
『少しそのことについて彼女に聞いたのよ。私も漆黒の羽を持つ彼女に興味があったしね。』
「へー…」
そろそろ帰ろうかと席を立つとユンは少し不貞腐れた。
「もう帰るの?」
『別にいいじゃない。毎日ここに来てるんだし。』
ユンもよく飽きないものだ。
「そういう問題じゃ…」
『じゃあね』
ーガチャ
半ば強引にユンの部屋をあとにするとその向かい側の部屋に入った。
そこは私の部屋で、いつもの静かさはなく何やら騒がしい。
「あ!ミラ!!おかえりなさい!!」
シャルルが嬉しそうに抱き着いてくる。
それに思わず笑が零れた。
『どうしたの?』
「ううん、この感じ、なんか懐かしいなって。」
「…おかえりなさい」
でれでれの姉の後ろで少し気まずそうにヘブンが挨拶をしてくれる。
『ただいま』
「不思議、なんだか初めてあった気がしないの。」
シャルルはツインテールした髪を撫でた。
『この時計のおかげじゃない?』
「そうなのかな?」
とても冥界の番人とは思えない無邪気さに心が穏やかになる。
こんなに穏やかな気持ちは久しぶりだ。