神々の聖戦
ーコツ コツ コツ
白の床、白の壁、白の天井。
窓のない病棟。
ひとつのベッドにアニーは横になっていた。
窓がないのは、血の香りでZENOが襲って来ないようにするため。
わかってはいるが、気味が悪い。
『アニー…ごめん』
眠っている彼女の服を少し捲る。
前は右腕をユンが治していたが、やはり腹部にも怪我をしていたらしい。
かなり大きな傷で一生モノだ。
これじゃあ、この傷を見て召喚術のことを死ぬまで後悔してしまう。
貴女は真実と正義の神の器。
曇なんて似合わない。
私は彼女の腹部に手を翳す。
『時よ、遡れ。』
身体中の力が抜けていく感覚。
彼女の傷跡が完全になくなると私は地面に崩れ落ちた。
もう、寮に帰れるかもわからない。
只でさえダメージを受けていて治療能力が体力を奪っていたのに…
周りに他の生徒がいないことを幸福に思いながら息を整える。
「ミーラさんっ」
ひょっこり角から顔を出す彼女。
やはり、貴女だったか。
「すごいなぁ…あんな大きな傷が数秒で治っちゃった…あれ、でも可笑しいなぁ…ミラさん、辛そう……きゃはははは!!!!!」
気が狂ったように笑い出す様子に、睨みを効かせた。
「やだ…そんな目で見ないで、ゾクゾクしちゃうから。」
耳元で囁かれ、背筋が凍る。
『貴女、誰。』
「私?見ての通りじゃない!」
濃紺の髪がサラッと肩から流れる。
『シーナ……』
裏切り者は、貴女よ。