神々の聖戦
「正解ー!アニーの召喚陣に細工をして失敗させたのも、学園内にZENOを“呼んだ”のも…ぜーんぶ…私。」
だからあの時、窓ガラスを割ったZENO達は真っ先にシーナに反応した。
『どうして…』
治の女神…彼女はとても穏やかで優しい。
その器のシーナが…ZENO側につくなんて。
「どうしてって……あの方は私に全てを与えてくれる!!!私の力はみんなとは違って役に立たないのよ!!」
そんなことない…治の能力は…役立たずなんかじゃない。
「でも、あの方は私に必要だと力を与えてくれた、それに役目すらも与えてくれたの。…貴女を、あの方の元へ連れていくわ。」
『い、や…』
抵抗は虚しく、よくわからない黒い影が私を壁に縛り付ける。
「ふふっ…苦しんでる顔も可愛いのね。ほんっと、憎たらしいくらいよ。」
腫れている腕を強い力で握られる。
『あぁっ!!!!』
堪らず出た大きな声に反応してアニーが目を覚ました。
「シーナ…?ミラ…?えっ、これどうなって…」
『逃げ…て』
唯ならぬものを感じたのかアニーは枕元にあった銃を手にした。
「ふふふ!アニー…ありがとう。貴女のお陰でこの女をここまで弱らせることが出来たわ。」
アニーははっとしたようにお腹を見る。
「傷がない…」
全てを悟ったかのようにアニーは銃をゆっくりとあげる。
「ねぇすごいでしょ!私…」
ーパンッ
「私は…曲がったことが大嫌いだ。最近様子が変だったから心配していたのに、まさか…あんたが!!!裏切っていたなんて…
今度は外さない!今すぐ、ミラの拘束を解きな!!さもないと……撃つ!」
アニーは苦しそうに顔を歪めた。
シーナとアニーは幼い頃からの仲だったのに…何故こうなってしまったのか。
紛れもない、私の所為だ。
「クスクスクス…笑わせないでよ、その引き金をアニーは引けない。」
「っ…」
シーナは楽しそうに私の顎を掴んだ。
「美味しそうな血…」
っ!!
『駄目っ』
神の血を飲むなんて行為は……“神墜ち”となってしまう。
神墜ちした者は超危険人物として世界中に知らされ、発見次第抹殺を命じられる。
ーガプッ
『や、やめて…シーナ……』
私達の体は爪や歯を変形させ鋭利なものにできる。
首元に今突き刺さっている“牙”は一度神の血を浴びれば元には戻らない。
ZENOや人間ではなく、神に反逆した証としてそれは永遠に残る。
「悪魔……」
アニーは簡易ベッドから降りて一目散に走っていく。
全身から力が吸い取られる感覚がして気持ちが悪い。
『シーナっ……』
「なにこれ…力が……」
一瞬見えたシーナの目は赤黒く、もう前のシーナには会えないんだと悟った。
私はぐったりと項垂れてもう指一本動かせない。
再びシーナが噛み付こうとする気配がして、恐怖が体を震わせた。