神々の聖戦
『シーナは…あの後幽閉されたって聞いたわ。』
「一度入れば二度と抜け出せないカロライズ牢で、今は協会の拷問部隊に“あの神”の居場所について拷問されてるみたい。」
クラスはずっと静かで、アニーもとても落ち込んでいた。
狩人は貴重だ。
仲間も、とても貴重な存在だ。
オスカークラスは各学年十五人程度。
毎年、世界中で十五人しか、たったの十五人程度しか狩人は生まれてこない。
しかも、そのうち三分の一以上は成人を迎えるまでに亡くなってしまう。
数少ない同志達は、暫くシーナのことで悩むことだろう。
次、クラスから消えるのは誰だろうかと不安を隠して私達は生きている。
『……』
「ミラ…?」
私が歩みを止めたのに気付いてユンは振り向いた。
『…もっと早く、気付けなかったのかな。』
珍しく弱気な自分が嫌になる。
ふいに、ユンの大きくて繊細な手が私の髪をクシャクシャとした。
「……そんなの、考えても何も変わらないよ。」
『私なら、過去に戻れるのに。』
今の私じゃ、到底力が足りない。
「過去に逃げないでよ。もしミラが戻れたとしても今が変わるかなんてわからない。
今は俺達ができる最善を尽くそう。」
『そう…よね』
こんなことで悩んでも仕方が無い。
起きてしまったことを変えるのは、今必死で悩んでる人の努力を無駄にしてしまう。
“あの神”を倒すために力をつける。
それが私が今しなくてはいけないこと。
「ごめんね」
ユンは謝って私の髪を直した。
『ううん、ユンのお陰で元気が出たわ。
ありがとう。』
「じゃあ行こうか」
ユンが再び歩き出すと、私は隣に並んだ。
『ユンは…どこにも行かないでね。』
「っ…またそういうこという!」
耳を真っ赤にしている彼に笑いかける。
どこにも…行かないで
またらしくないことを言ってしまった。
いつか不安のない生活が築けたなら…何度そう願ったか。
シーナもこの争いで傷付いた一人の犠牲者でしかない、か弱い十五歳の女の子だった。
この闘いを終わらせる。
そう誓った“あの日”、
私は初めて自由を見ることが出来た。
そして今、
世界を変えるために前を向く。
もう二度と振り返らない。