神々の聖戦

ーギィイ

「父さん、来たよ。」

着いたのはこの学園の中心部にある、世界で唯一の大聖堂。

聖堂は古くから王の城と共にあるのが普通なのだが、この大聖堂は違う。

遥か昔は三つの大国があり、それぞれの国の大聖堂がZENOに襲撃に遭った。

圧倒的な数のZENOにより三国は滅びたが、
国が滅びても尚、“ある男”は大聖堂を守り抜きこの聖堂だけが残った。

その男は亡国の第三皇子

チェイス・ハント

名前の意味は姓名共にハンター

彼は産まれてから一度も世間に公表されず、大聖堂を守る狩人として育てられた。

姓も王の姓ではなくハント

理由は王が強い身体能力を持つ彼に第一皇子の地位を危ぶんだからだ。

第四皇子が産まれた時、その皇子は“第三皇子”
として公表された。

チェイスはまだ幼い第三皇子を国が滅びる前に助け出し、戦いの後に忽然と姿を消した。

助けられた第三皇子は成長すると、戦いの果てにボロボロになった世界を立て直し、一つにまとめ、国を築いた。

それが今あるクレリティス王国。

“第三皇子”が救い、治めた美しい国。

私はゆっくりと大聖堂の壁に指を滑らせた。

『いないみたいね…』

聖堂の一部の壁に、大きなヒビが入っている。

それは戦いの名残であり、取り除くことの出来ない傷。

「聖堂は人と神を繋ぐ架け橋…か」

『…誰が架け橋を架けたか知ってる?』

「さぁ…でも神なんじゃないかな」

『正解』

私は皮肉っぽく笑った。

『今、私達が血眼になって探している“災厄”を齎した神が人間界と神界を繋げた。
ZENOをこの世界に連れてくるために…』

「え…?」

『私達や魔導師が守るこの聖堂は、
災厄を齎す為のものだった。
それを今は神との繋がりとして守っているの…もし消えれば、神や天使の加護の力は受け取れないから。』

「それも、なにかの古い書で読んだの?」

『えぇ…』

残酷な話よ。

私はゆっくりと瞼を伏せた。

『全てが終われば、私は破壊する。(ボソッ』

「……」

ユンに聞こえてしまっただろうか。

ワイアットさんが大事に守っているこの聖堂を消すなんて、悲惨な話よね。

でも、全てが終わりさえすれば、私はこの聖堂を破壊し神との繋がりを断つつもりだ。

もう二度と、同じ惨劇を繰り返してなるものか。

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