神々の聖戦
__________________
___________
_______
聖堂を出て、私達は寮の屋上から空を見ていた。
沈みかけの太陽が、世界を茜色に染める。
『渡したい物があるって言っていたよね。』
「うん」
ユンは何処から出したのか、指を鳴らして黒い箱を手に持った。
「目、閉じて。」
ユンの甘い声が耳を燻る。
そして、耳元に冷たいものが当たる。
『っ…』
「終わったよ」
何かが触れた左耳を触った。
…イヤリング?
「そのイヤリングは外さないで、もしもの時があったら、そのガラス玉を割って欲しいんだ。」
『…割ったらどうなるの?』
「秘密」
ユンは照れくさそうに笑って沈み行く太陽を見つめた。
さらさらと彼の髪を攫う風はどこか暖かい。
耳元で揺れるそれを指先で遊んでみる。
こういうものを付けるのは久しぶりだ。
『ありがとう』
このガラス玉を割らないことを願う。
「試験…怪我しないでね」
『少し難しいかもしれないわ』
苦笑いをしてユンの背中に背を向ける。
命すら危ういんだ。
『今からでも間に合う…ユンは辞退しなよ。無事で戻れる可能性は低い…なにも私と一緒に試験を受けなくたっていいのよ。
私はあなたの未来を見ることが出来ないから…』
「なんで、そんなこと言うんだよ……俺はミラを」
『もし、これが私のためなんだとしたら今すぐやめて。』
私のせいで傷つく人を見るのはもうたくさんだ。
「……そうだね、やめるよ。」
ユンは意外にもあっさり、認めた。
あまりにもそれは呆気なくて少し悔しくなる。
でもこれでよかったんだ。
部屋に戻ろうと歩き出すと、唐突に手を掴まれた。
『っ…』
「ミラのためじゃなくて、俺は自分のために闘う!!!自分のために、ミラを守るんだ。」
『……と、……じゃ…の』
「え?」
ユンは前に回ってしたから顔を覗き込んでくる。
少し強さを含んだくりくりとした目が、真っ直ぐに私を捉えて離さない。
『ばかじゃないの!!!なんで…』
なんで私がいつまでも恐くて言えない言葉をそうも簡単に言えるの?
ボロボロと落ちる涙が日の落ちた学園を鈍色に変える。
『いっつもっ自分勝手なんだから…』
ユンの胸を殴ると少し痛む拳
それを癒すかのように手を取り涙を掬った。
「おあいこ…でしょ」
なにがおあいこよ…なにが……同じよ
正反対の存在なのに
私が闇ならあなたは光
あなたが“笑”なら私は“涙”
私にとってユンは眩しすぎる。
ほらまた
そうやって笑って、私が作った壁をいとも簡単に壊していく。
『…かなわないわね』
いつまで経っても、
私にとってあなたは…
「ね!見てよ!!!
数十年に一度の流星群…これをミラに見せたかったんだ。」
夜空に降り注ぐ星
それは幸福か、それとも災厄を率いてきたのかわからない。
ゆっくりとユンの頬に口付ける。
時間が止まったように、動かないままじっと私を見つめていた。
「え…」
ずっと固まっている彼の顔が面白くて思わず笑ってしまう。
嗚呼、願わくば彼の笑顔が枯れませんように。
星空に願いを
この時に永久を…
「ばっ…もう、こっちみるなよ…」
その顔を何故かずっと見ていたくて、無意識に時を止めていた。
世界の時は止まる。
けど、私達の時間は止まらない。
ただお互いに視線を絡ませている。
「…ミラって、ツンデレだよね」
『は?』
「いやー…言動と行動が一致してないっていうか」
『今のは感謝の気持ちよ…誤解しないで』
「クスクス…わかったよ」
ユンは嬉しそうに髪の毛で顔を隠して笑っていた。
なんだか気に食わないわ。
あれ、でもどうしてだろう…
十秒以上経ってるはずなのに、何故か苦じゃない。
時を止めているのに全く疲れない。
『解せないわ』
能力を解いて空を見上げた。
流星はこれでもかというほど主張して消えていく。
ーカチカチカチ
時はまた、動き始める。
___________
_______
聖堂を出て、私達は寮の屋上から空を見ていた。
沈みかけの太陽が、世界を茜色に染める。
『渡したい物があるって言っていたよね。』
「うん」
ユンは何処から出したのか、指を鳴らして黒い箱を手に持った。
「目、閉じて。」
ユンの甘い声が耳を燻る。
そして、耳元に冷たいものが当たる。
『っ…』
「終わったよ」
何かが触れた左耳を触った。
…イヤリング?
「そのイヤリングは外さないで、もしもの時があったら、そのガラス玉を割って欲しいんだ。」
『…割ったらどうなるの?』
「秘密」
ユンは照れくさそうに笑って沈み行く太陽を見つめた。
さらさらと彼の髪を攫う風はどこか暖かい。
耳元で揺れるそれを指先で遊んでみる。
こういうものを付けるのは久しぶりだ。
『ありがとう』
このガラス玉を割らないことを願う。
「試験…怪我しないでね」
『少し難しいかもしれないわ』
苦笑いをしてユンの背中に背を向ける。
命すら危ういんだ。
『今からでも間に合う…ユンは辞退しなよ。無事で戻れる可能性は低い…なにも私と一緒に試験を受けなくたっていいのよ。
私はあなたの未来を見ることが出来ないから…』
「なんで、そんなこと言うんだよ……俺はミラを」
『もし、これが私のためなんだとしたら今すぐやめて。』
私のせいで傷つく人を見るのはもうたくさんだ。
「……そうだね、やめるよ。」
ユンは意外にもあっさり、認めた。
あまりにもそれは呆気なくて少し悔しくなる。
でもこれでよかったんだ。
部屋に戻ろうと歩き出すと、唐突に手を掴まれた。
『っ…』
「ミラのためじゃなくて、俺は自分のために闘う!!!自分のために、ミラを守るんだ。」
『……と、……じゃ…の』
「え?」
ユンは前に回ってしたから顔を覗き込んでくる。
少し強さを含んだくりくりとした目が、真っ直ぐに私を捉えて離さない。
『ばかじゃないの!!!なんで…』
なんで私がいつまでも恐くて言えない言葉をそうも簡単に言えるの?
ボロボロと落ちる涙が日の落ちた学園を鈍色に変える。
『いっつもっ自分勝手なんだから…』
ユンの胸を殴ると少し痛む拳
それを癒すかのように手を取り涙を掬った。
「おあいこ…でしょ」
なにがおあいこよ…なにが……同じよ
正反対の存在なのに
私が闇ならあなたは光
あなたが“笑”なら私は“涙”
私にとってユンは眩しすぎる。
ほらまた
そうやって笑って、私が作った壁をいとも簡単に壊していく。
『…かなわないわね』
いつまで経っても、
私にとってあなたは…
「ね!見てよ!!!
数十年に一度の流星群…これをミラに見せたかったんだ。」
夜空に降り注ぐ星
それは幸福か、それとも災厄を率いてきたのかわからない。
ゆっくりとユンの頬に口付ける。
時間が止まったように、動かないままじっと私を見つめていた。
「え…」
ずっと固まっている彼の顔が面白くて思わず笑ってしまう。
嗚呼、願わくば彼の笑顔が枯れませんように。
星空に願いを
この時に永久を…
「ばっ…もう、こっちみるなよ…」
その顔を何故かずっと見ていたくて、無意識に時を止めていた。
世界の時は止まる。
けど、私達の時間は止まらない。
ただお互いに視線を絡ませている。
「…ミラって、ツンデレだよね」
『は?』
「いやー…言動と行動が一致してないっていうか」
『今のは感謝の気持ちよ…誤解しないで』
「クスクス…わかったよ」
ユンは嬉しそうに髪の毛で顔を隠して笑っていた。
なんだか気に食わないわ。
あれ、でもどうしてだろう…
十秒以上経ってるはずなのに、何故か苦じゃない。
時を止めているのに全く疲れない。
『解せないわ』
能力を解いて空を見上げた。
流星はこれでもかというほど主張して消えていく。
ーカチカチカチ
時はまた、動き始める。