神々の聖戦

月の美しい夜

私達は学園の隣町、王都アダムスフィアを駆けていく。

屋根から屋根へ飛び移り徐々に近づく三つの建物を見た。

真ん中にあるのは女王の住まう宮廷、少し離れた左右にある黒と白の邸は狩人、魔法協会の本拠地だ。

『風が気持ちいい』

ユンに追い抜かされると楽しくなって再び抜く。

こんな小さな争いをしているうちに、“それ”は目の前に大きく構えていた。

ータンッ

屋根から飛び降りて私達は顔を合わせる。

“黒の邸”だ

狩人は黒を基調としていて、建物も植物もすべてが黒だ。

大きな門の前に立つと自動的にそれは開き目の前に整った顔立ちの男性が立っていた。

「ようこそおいでくださいました。
どうぞこちらへ…」

広い庭に咲き乱れる黒薔薇の香りが鼻をかすめる。

暫く進むと円柱状の柱がいくつも並んだエントランス、目の前には厳重な扉がある。

「ここをお通しするには客人か狩人でないといけません。紋章を確認させていただきます。」

男性はそういうと赤黒い目を私達に向けた。

とても悲しく…恐ろしい目。

これは殺人者の目付きだ。

すらっと伸びた長い手足に鍛えられた体、儚げに揺れる灰色の髪。

なぜだろう…とても泣きたくなる。

「ミラ、泣いてるの?」

『え…』

頬に伝うものに気付いて拭った。

どうして彼はこんなにも辛そうな表情をしているの?
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