神々の聖戦
ユンは左目に少しかかった前髪をかきあげた。
アメジストのような目には無の神の紋章が見える。
男性は頷いて今度は私を見た。
「あなたの紋章は…」
ードキッ
私に…紋章はない
代わりにあるのは世界時計
そしてそれを知っているのはほんの数人でユンは含まれていない。
「ミラ…?」
男性は何かを察したように口を開いた。
「人に見せられないところに紋章でも?」
少々勘違いしているようだが取り敢えず頷いた。
「安心してください。今日は私が見張りでしたので幸運でしたね。私の家には代々神の紋章を見る力があります。」
え…?
神の力を見る力
『っ!』
世界時計の在処が掴まれてしまう。
止めようとしても既に遅く、彼の目は赤く染まっていた。
「は…?そんな…まさか」
唖然と立ち尽くしている彼をユンは眉間を険しくして見つめていた。
冷や汗が背を伝うのを感じる。
「……ミラの紋章がどうかしたんですか」
「っ、いえ」
彼は私をちらりと見ると唾を飲んだ。
「…紋章を確認いたしました。
“俺”の名はセス・プレディリック。
ようこそ黒の邸へ、先程の口調は客人として迎えたからだ。しかしお前達は狩人、それ相応の対応をさせてもらう。」
一風変わって冷たい表情を浮かべた彼は厳重な扉を開けた。
「セス・プレディリックって…プラチナの?」
ユンは驚いたように呟いていた。
ホーク先生は例外だがプラチナと顔を合わせる機会なんて滅多にない。
セスさんと目が合って思わず逸らした。
彼は恐らく世界時計を見たのだろう。
それを上に報告されるのかどうかと思うと肝が冷える。
「名はミラ・ゼンドだったか…」
『はい』
確認するように私の目を振り返って見つめてくる。
どうしてだか、また泣いてしまいそうで目を逸らした。