神々の聖戦
目を開けるとそこは教室ではなかった。
ホーク先生の言った通り、彼等に飲み込まれたようだ。
こうなることは分かっていた。
何故なら…
「ふふっ、綺麗なお姉さん…私達を呼べるのは“彼女”だけ。」
「時の女神…ミラ」
私に与えられし神の力は
時を操り予知する力。
私の名前は、ミラ。
『初めまして、というべきかしら。』
「不思議な人ね、まぁ彼女もそう“だった”。」
私が召喚したのはヘブンとシャルル。
ヘブンは双子の弟で天界(神の世界)の番人をしていて、綺麗な白髪に青い目をした美少年。
一方、シャルルは双子の姉で冥界の番人をしていて、同じ白髪に赤い目をした美少女だ。
「お前が時の女神の器に値する人物であるか、
俺達が判断する。」
『結果は見えているわ。』
「それはどうかしら…」
シャルルの笑い声が響いた瞬間、ふたりの姿は彼女の能力により見えなくなった。
シャルルは冥界による暗黒の使者…影を操るのは最も容易いことだ。
視界が真っ暗になった。
この次に起こることはもう頭の中に映像となって流れてきている。
すぐさまに両腕で視界を奪った。
その間から凄まじいヘブンの光が容赦なく差し込む。
目くらましだ。
双子だがシャルルと正反対の天の光…この光は神の世界を犯す者の心にとって最大の毒となってしまう。
しかし、味方となればそれは万能の癒しとなり最強の使い魔になる。
私はレッグシースからナイフを取り出した。
「私達にそんなナイフが効くとおもっているの?」
『神器を出すまでもないわ。』
「随分となめてくれるじゃん。」
ヘブンが技を繰り出そうとする直前、
時が止まる。
正確には、私が止めた。
でも今の私では止められる時間は精々10秒程。
時の女神の力はほぼ最強に等しいが、体力の消耗も激しい。
最強にして最大の弱味でもある。
頭を使って闘わなければいけない。
けど今回は私の勝ちね。
『勝負は見えてるって言ったでしょ。』
時が動き出した時には私は二人の首元にナイフを当てていた。
「う、うそ…」
「時の力を扱える人間がいるなんて…。」
『時の力を授かった者はその力の大きさから自らを破壊してしまうと女神は自ら語り、人間に力を与えなかった……と古い書物に書いてあったわ。』
「そう…その後にミラ様は……」
シャルルは長い睫毛を伏せた。
『謎の死を遂げた…この話はここまでにしましよう。で、私は彼女の器として相応しかったか教えてくれる?』
ふたりは目を合わせた。
「時の力を扱えるのは相当な力の持ち主だけ。ミラ様が認めたんだもの、私達が認めない筈がないわ。ミラという名前も何かの縁だろうし…」
首元にあったナイフを離すとヘブンは緊張から解かれたように肩を脱力させた。
「君と契約を結ぼう。」