大好きなキミに花束を。



「まあ、まだ老人ホームで働くとは決まったわけじゃないけどね。介護って言っても色々あるし。」


「すごいですね。」


「勉強とかは嫌いだけどねー!」



冗談っぽく笑ったその顔は、さっき教室で見た時と違う、夢を見据えた大人の顔だった。



「さらちゃんは夢とかあるの?」


「私は…ないです。」



高校行ったらなにか見つかるかなとも思ったんだけど。


今はまだ見つからずじまいだ。



「小さい頃とかは?」


「まあ、総理大臣になりたいとは思いましたが。」


「ご立派な夢で。」


「先輩の小さい頃の夢は?」


「世界の王様になりたいって思ったことはあるけど。」


「それこそご立派な夢ですよね。むしろ立派を通り越して笑えてくる。」


「ふつうに笑えるって言ってくれる?」



そうか。


先輩にも夢があったのか。


先輩に近づくために聞いたのに、なんか逆に手の届かないところにいっちゃったかんじ。


……それでも近づいた気はするんだけど。




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