大好きなキミに花束を。
*
「……この辺は坂が多いな。さっきから登ったり下ったりしてるぞ。」
「そうですか?普通だと思いますけど。」
それにしても……やっぱり遠い。
コンビニなんてそこら辺にあるものなのに、なんで片道15分もかかるわけ?
行くなんて言わなきゃよかった。
「なぁ彩心。…1つ、聞いてもいいか?」
「なんですか?」
「彩心は、ほんとに陽彩のことは好きじゃないんだよな?」
「え…。」
「あ、答えたくないなら答えなくてもいいけど、ちょっと聞いてみたくなってな。」
「べつに……好きじゃないですよ。」
「えっ、そ、そうか!そっかそっか!ならよかった。」
「……なにがよかったんですか?」
「ん?ああ、私は、彩心が好きになった人を好きになりたくないって思ってる。だから彩心が陽彩を好きじゃないって聞いて安心したよ。」
「………それってつまり、」
「へへっ。言おうか迷ってたんだ。陽彩は彩心にベタ惚れだし、勝ち目はないってわかってたから。だけど、最近になってちょっと頑張ってみようと思って。」
「………。」
「だから、彩心が陽彩を好きじゃないって聞いて安心したんだよ。」
──ドクンッドクンッ
「…そう…ですか。」
この胸のうるささは、きっと目の前の恋してる師匠が可愛いから。
きっと…。
それ以外は、ありえない。