【完】ちょいワル先生と優等生
「可愛いっ…!」
そんな、はてなマークいっぱいでぼーっとした頭が現実に戻ったのはあるマグカップを見つけたから。
2つのマグカップをくっつけると絵が繋がる、よくあると言えばよくあるペアのマグカップ。
「これ?」
倫哉さんも私の後ろから手を伸ばしてマグカップを取る。
ペアマグカップなんていらないでしょ?
「いいね」
と思ったのに。
え、何がいいの?!
ペアだよ。ペアなのに…?
さっさと決めてカゴに入れるその姿を私は見ていることしかできなかった。
*
「ありがとう」
「私が選んだものばっかり。
それで良かったんですか?」
「俺はゆずちゃんに選んでほしかったの」
そう言われると何も返せない。
本人が言うんだから…いいんだよね、これで。
その後、私達は映画館で映画を見た。
最近流行っていた大人の恋愛もの。
見終わった私にはもう、1つの感情しかない。
「早く大人になりたい」
どうしても私は大人じゃない。
倫哉さんが言うようにガキなんだ。
もちろん年齢差は埋められない。それでも…
未成年と成人って全然違うんだ。
「大人にしてあげようか」
「え?」
「ゆずちゃんを大人の女に、してあげようか?」
この人の言う"大人"は私の思う"大人"と同じものなんだろうか。
…きっと違う。でも、それも"大人"に代わりない。
「家、来る?」
倫哉さんの家。
その一言が私の頭の中を埋め尽くす。
耳の中に響いている。
「…行きたい、です」
ただ単純に行ってみたい。
住んでる部屋を見てみたい。どんな朝を迎えているのか知りたい。
貴方をもっと、理解(わか)りたいの。