天音's短編小説集
『知らないだろ』
「せーんせ、スキ」
「はいはい」
「スキ、せんせ」
「ありがと」
いつだって先生は私の精一杯の告白を流してばっかり。
好きって言葉を返してくれた事なんて、ほとんどない。
「もぉ、せんせ!全然わかってない!」
「なにが」
「私がどんだけ先生を好きか」
全く分かってくれてない。
クラスが違うことがこんなにも辛くて、数学の時間だけが唯一の至福の時だって。
普段だって、なかなかデートもできないのに。
「へぇ。じゃあお前はわかってんの?」
「わかってるよ。私は先生の事…」
私は先生の事世界で一番好きだって。
そう言おうと思った私の腕を引いて、グイッと顔を近づけた先生。
「俺がお前をどれだけ好きか。本当にわかってる?」
真剣な目。
「俺が教師だから我慢してんの、わかってんの?」