天音's短編小説集
7月のなんでもない土曜日の午後。
彼はまたやってきた。
「向日葵を一本…」
「はい。今度は誕生日か何かですか?」
なんとなく訪ねた。
ぎこちないけど真っ直ぐで純粋そうな彼にプレゼントしてもらう人はなんて幸せなのだろう。
「いえ、今日は…」
彼からお金を受け取ってラッピングしたヒマワリの花を手渡す。
その日の彼も、あの日のカーネーションのように真っ赤だ。
「あ、あの、この花、もらってもらえませんか」
勇気を降り出したような真っ直ぐな声。
真っ直ぐ私に差し出された向日葵の花。
「あなたと話すきっかけ欲しかったんです」
続けて彼は言う。
「向日葵みたいな笑顔のあなたが好きになりました」
8月。
彼は相変わらず花屋にやってくる。
ぎこちない笑顔を浮かべ真っ直ぐな瞳で。
彼の姿を見つけると、私は嬉しくなって駆け出す。
手を取り合って、今日はどこへ行こうか。
向日葵みたいな君が好き