甘すぎてずるいキミの溺愛。



美郷さんがひょこっと尊くんの顔を覗くと。


「っ……近いし」


あぁ……もう、やだ。


泣きたい

帰りたい


そんな感情ばかり出てくる。



ここで泣いたら変なふうに思われてしまう。

だから。


「あ、あの、わたしもう帰ります…っ。あとは2人で楽しんでくださ…い」


この場を離れることを選んだ。


モヤモヤして2人を残して帰るのも気が引けるけども。


「え、でも」


あたふた慌てる美郷さんをよそに


「じゃ、じゃあ……またね、尊くん」


背を向けて、2人の前から立ち去ろうとしたのに。


「……なんで帰んの?」


引き止めてくるって一体なにを考えているんだろう。


わたしなんかより、美郷さんと一緒にいたいでしょ…?
だったら、引き止めないでよ…。


後ろに振り返りたいけど、振り返らず。


「せ、せっかく美郷さんに会えたんだから……わたしなんかより美郷さんと一緒にいたほうがいいじゃん…っ」

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