とろけるようなキスをして[短編]完

「あんたに付きあうの、もう疲れたの。
 
もう、うんざりなの。」
 
 
『あや、ちゃん‥』
 
 
「だからもう終わりにしてよね。
 
じゃ、私は教室に戻るから。
 
 
‥‥彼女とお幸せに。
 
 
バイバイ、川上 愁。」
 
 
1度も振り向かずに保健室を出る。
 
 
廊下に出た途端、涙が堰を切ったように溢れ出す。
 
「‥‥うっ‥」
 
 
声を出してはいけない。
 
あいつに気づかれてしまうから。
 
せっかくカッコ良く決まったのに。
 
泣いてるなんて知られたら、最悪だ。
 
早く泣き止んで、教室に行こう。
 
早く、この場から去りたい。
 
 
早く、川上 愁から逃げたい。
 
 
涙が止まるとすぐに、私は教室に向かった。
 
 
『あやっ!もう大丈夫なの?』
 
「うん、大丈夫だよ。もう終わったことだし。」
 
『えっ‥‥じゃあ、愁くんに会ったの?』
 
 
「さっき、お別れしてきた。」
 
 
『あや‥‥でも‥『失礼しますっ!!』
 
 
勢いよく開いた教室のドア。
 
 
『渡瀬あやちゃんって、どなたですかー?』
 
 
どこか軽そうな、男にしてはちょっと高い声。
 
.
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