END OF THE WORLD
上の者下の者
アルバタナ歴50年。
絶対的な王の下、平和な日常が約束されたアルバタナという一つの国がありました。
隣国テラルとの関係性も良好、争いごとなど滅多に起こらない誰もが幸せだと感じる国。
王位継承争位はあっても、不思議と皆争うことはなく正式な会議の元王が決められていたのです。
だからこそ誰もがこの国で生きたいと羨ましがり、妬み、幸せを求めていました。
「----と、まあこの国は大層平和ボケした国になっているわけだ」
本を読んでいる途中で掌を返した男、アベル。
それを見て冷たい横目で見つめるのは側近(部下)のシロだった。
此処はアルバタナの王宮の一室。だがアベルは王位継承者なんていうど偉い身分ではない。
この国軍のトップという華やかな地位を持ちながら、本人のやる気は下っ端の私よりも低かったりするのだ。とんでもない国軍トップである。
「…平和ボケなんて、なんて言い草ですか」
「シロ、お前は俺の見方じゃないのか?」
「見方も何も、貴方国軍トップでしょう…下を揺るがすような発言は慎んでください」
本当に仕事以外はやる気のない輩だ、と冷めた顔を向けながら、シロは渡された書物を棚奥に仕舞った。そんな冷たい発言を余所にニコニコした顔でシロの様子を見守るアベル。この光景はもはやこの王宮では日常化している。
自由奔放上司に振り回される部下。
地位は羨ましがられど、二人を見た王宮の者は誰もがその地位にはなりたくないという。
それくらい部下は苦労しているため、同僚や王宮の者からは同情されるレベルなのだ。
「まさに盲目、争いがないなんて誰がそんな綺麗事を」
「鼻で笑ってますけど貴方が終わらせたんでしょう、この国の戦を。」
「終わってないさ。なんにも。
むしろ…火種は増えた」
机に置かれた珈琲がそろそろ冷める頃、彼はその珈琲を勢いよく飲み干した。