END OF THE WORLD
アベルがアルバタナの戦争を終わらせたのは、この国では有名な話だ。
一般の軍人からトップまで登り詰め、終わらない戦争を指揮し完戦させた彼の軍略は、到底真似できないものだった。近くで見ていたからこそ分かる、彼の才は本物だ。そしてその才に伴い、洗練された身体、顔。
そして誰もが羨む地位。
…まあ世の女が放って置くわけもなく。
彼は女関係でも大忙し。
(29歳なんだからそろそろ落ち着けばいいのに)
お陰で彼の部下は大層苦労しているのだ。
「…火種が増えるのは当たり前のこと、戦争があれば憎しみが生まれて当然でしょう。」
「それを全て受け止めるのは軍人の仕事か、なんて報われない生き方なんだろうな」
「…そんなこと思ってもいないくせに」
「さあ、どうだろうな」
本当減らず口が過ぎる男。
この度胸と自信で上まで登りつめてきたのだ、大した男だ、本当に。そしてそんな男の下で働き続けている自分も本当にどうかしているのだろう。
シロの目線とアベルの視線がかち合う。
「なんだ、シロ。熱い視線だな」
「いや、ほんと女癖悪いよなって思って」
「光栄だな」
呆れて溜息をつく事すら忘れそうだ。
その時、扉をノックする音が響いた。
二人が目を向け姿を見せたのは、私と同じく直属の部下、ナイアンだった。今日も髪一つないすっぱりとした頭をお持ちである。
「ナイアン、どうしたんです?」
「ああシロ、おはよう。アベルに一報が届いていてな」
「ナイアン俺に挨拶は無しか」
この流れもいつものパターンである。