風の言の葉(詩)
野良犬
行き交う人ごみ
僕はなんてちっぽけな存在なんだろう。
きっとアリのように簡単に踏まれて
忘れ去られてしまうのだろうか。


でも僕は知ってる。人の優しさを。

遠い昔、あのコは僕との別れを悲しんでくれた
大好きなあのコのため、独りで生きることを
決意したんだ。だけど・・・


やっぱり独りは寂しいなぁ。
こんなに人はたくさんいるのに
まるで僕しかいない世界に迷い込んだみたい。


行き交う人ごみ、だれも野良犬に見向きもしない


こんなに汚れて惨めで、それでも君に会いたくなって
ごめんね。
笑われてもいい、蔑まれてもいい。
ただ、もう一度だけ会いたい・・・。

時は急速に流れ、弱っていく身体。
最期に君の優しさに触れることができたら・・・
僕は強く強く、願ったんだ。


行き交う人ごみ、女は弱り果てた野良犬に足を止めた。
どんなに時が彼女の背格好を変えようと、
心までは変えられなかった。

僕は夢を見た。懐かしくて暖かい夢。
それはそれは、優しさに満ち溢れていた。

そして僕は、君の天使になる。




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