All I want for Christmas is YOU ~クリスマスに欲しいのはあなだだけ~
6年前の春

水上美亜19歳。大学2年。
ごく普通の容姿に、ごく普通の体形。どこにでもいるような人間だと思う。
髪はずっとここ何年も肩の上で切りそろえている。
なんだかロングという長さが自分で少し照れくさい。

すこし釣りあがった二重瞼の目は、『綺麗に見えるよ』と友達は言ってくれるけど、冷たく見られるからあまり好きじゃない。ただでさえ素直になれないかわいくない性格なのに、これ以上自分自身をこじらせたくないのに……。

「ここの席いい?」

少し込み合った教室で不意に声を掛けられて慌ててその声の主を見ると、ニコリと笑った笑顔に思わず見とれた私は返事が少し遅れた。

「あっ……ダメだった?ごめん!」

「あっ!ううん!全然大丈夫!」

つい語気を強めて慌てっていった自分が恥ずかしくて、スカートの裾をギュッと握った。
そんな私を見て、クスっと笑う声がして、
「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて」

同じ学年の男の子に比べて、柔らかく甘い言葉に私はまたいいようのない気持ちになり、チラリと座ったその男の人を見た。
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